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「今回の任務はこれにて終了。ナルト、リーダーとして報告書 頼むね」

「・・・だぁ」
ナルトが思い切り ガックリとこの世の終わりのように項垂れた。
「・・・もう二度とこんな任務は ごめんだってばよ・・・」
「まぁ 滅多にないんじゃない?こういうの」
「そういうカカシ先生だって 膝ガックガクじゃねぇか」
「あはは・・・それを言われちゃうとね。サスケ サクラ 本当にお疲れ。特にサクラは医療班で相当チャクラを使っただろうから ゆっくり休むように。
火影様にも伝えておくよ」
「はい」

「以上 解散」

その言葉と共に カカシ先生は 濃い夜の闇へと消えていった。
心許ない街灯の光りがその後姿を照らす。

終わった・・・・。
その安堵感がようやく胸にこみ上げてきて へなへなとその場に座り込んでしまった。


うちは


疲れた・・・。

今回の任務は本当に「色んな意味」で厳しかった。
国と国の境で 忍と村人との小さな争いが起きた事が原因だった。
その里の大名は 忍ばかりに頼り優遇し 村人は税金を搾り取るだけの存在としか考えておらず
厳しい取立てに 村人側の不満が爆発し 忍VS村人という紛争にまで発展してしまった。
いわゆる「一揆」だった。

驚いた事に チャクラや技をよく知らない村人達が 本や巻物で「聞きかじり程度」「見よう見まね」の忍術を体得し
それを使って 攻撃してきた事だ。
中には器用な者もいて 口寄せの術からありえない化け物を呼び出し 里は一気に緊迫した雰囲気に飲み込まれた。

そこで 援護隊として呼び出されたのが 第7班だった。

忍術を使ってくるとはいえ 相手は村人。手出しは無用。
力を力で押さえつけることなく 話し合いで解決をするのが最善の方法だと分かってはいたが 
村人の忍術は 基礎がむちゃくちゃなあげく 予想がつかず 忍が数名命を落とすという かつてない争いにまで発展してしまった。

ナルト サスケは口寄せの化け物を退治して 術者を一時 保護。

サクラは 医療班と合流して 忍も村人も分け隔てなく回復に当たった。

カカシは里の大名を懇々と説得し、村人に対する謝罪文を書かせた。

ただ 一度起きた内乱は「大名の声名文」だけでは落ち着かず 村人達は 自分達の「無茶苦茶な忍術」が忍に通用すると 息をまき
おさまる様子をまるで見せなかった。

事態の収拾がつかない事を見極めた火影たちが 能力の高い忍を送り出し ようやくこの内乱は 沈静させたが
いまだくすぶり続ける恨みの全てを解決するには至らず 気持ちの悪い幕引きになっての帰路だった。


あ~ぁもっとなんとか出来なかったかなぁ・・・。
自分の力不足が恨めしい。


「おい 立てるかよ」

サスケの声が頭上から聞こえた。

「・・・うん」

そのままノロノロと立ち上がると 盛大な溜息を一つ吐いてしまった。
ナルトも相変わらず項垂れていたが 「あぁもう!!!」と大声を出すと
「サスケ! サクラちゃん!一楽行くってばよ!」と勢い良く叫び ずんずんと歩き出してしまった。

・・・元気だなぁナルト。

大して空腹も感じていなかったが 何か美味しいものを食べて元気を出す、というやり方はナルトらしいと思った。
それに 今家に帰っても 暗い部屋で一人膝を抱えて 助けられなかった命を思い出して 凹んでしまいそうだったのは否めない。
まだ一人になるのは 嫌だった。

が。

体がフラリと揺れた。
サスケがそれに気がついて サクラの二の腕を掴む。
「大丈夫か?」
「ありがとうサスケくん。なんか木の葉に帰ってきたら ホッとしちゃって・・・」
「お前 無理して付き合わなくていい・・・帰って 休め」

確かに 疲労は想像を超えたものがあった。
「・・・うん。でも 今一人になりたくない」
伏目がちにそういうと
サスケが真っ黒な瞳をサクラに向け 溜息を一つ吐いた。
「どいつもこいつも・・・」
「・・・あはは」
「あははじゃねぇよ。ほら荷物よこせ」
「え?」
「持ってやるって言ってんだ 早くしろ」

サスケのさりげない優しさが 胸にしみた。

 

そこからサクラの記憶は曖昧になる。

ひどく・・・眠かったのだ。


一楽について ラーメンを頼んだのは覚えているが ちゃんと食べたのか記憶にない。
さすがに ナルトもサクラの様子に気がついたのか オロオロと心配そうな顔を見たのはボンヤリと覚えている。
その後 温かくてユラユラと心地いい揺れを感じたのは覚えているが その後どういう風に自宅に帰ったのか覚えていない。

ただただ 濃く深い疲労感と眠気に負けてしまった。

 

サクラ。

誰かが呼ぶ声が聞こえる。
落ち着きのある 少し鼻にかかる独特の低い声。

こんなところで寝たら風邪をひく。布団を敷いたからそこで寝ろ。

・・・うん分かってる。でもすっごく眠い・・・。
ねぇ 抱っこして連れて行って。

腕を伸ばせば 背中と膝の裏を軸に腕が差し込まれ フワリと身体が浮いた。
なんだかくすぐったい気持ちを味わう。肩に腕を回して 首筋に顔を埋める。

・・・サスケ・・・くん・・・

あぁなんていい夢。

 

それが 最後の記憶となった。

 


遠巻きに鳴くカラスの鳴き声を聞いて サクラは目を覚ました。
辺りは青く薄暗く 周りがよく見えない。

・・・夜明け前・・・?


パタパタと手を動かして目覚まし時計を探すが 一向に見つからない。
見つからないどころか 畳の感触を確認して驚いた。
自室の部屋はベッドだ。

私・・・何処で寝たんだろう。

布団の感じ、匂いが明らかに自宅と違う。

・・・私 夕べちゃんと家に帰れたっけ?

ハッと体を起こした瞬間 頭がズキズキと痛んだ。

「ぃた―――・・・」

体の節々が ギシギシと悲鳴をあげる。
昨日の疲労が一気に表に出てきた感じだ。随分時間がたってしまっているような感覚すら覚える。

今 本当に何時なのだろう。
上にある柱時計を確認すると 5時45分だった。


隣の部屋から淡い光りとボリュウムが押さえられた テレビの音が聞こえる。

・・・まさかとは思うけど。
そっと 引き戸を開けると そこにはソファに座ってテレビを見てくつろいでいる サスケの姿があった。
眩しくて顔をしかめる

「・・・・サスケくん?」


サクラの声を聞いて サスケは瞳をむける
「あぁ 起きたのか?」
「・・・・私 ひょっとしてサスケくん家に 泊まらせてもらっちゃった?」
「・・・覚えてねぇのか?」

全く覚えてない。

頭が真っ白になってしまって コクリと頷くことしかできなかった。

「お前 一楽で寝ちまったから 1番近い家に運んだ」
あぁ・・そうなんだ・・・。でも・・・・。

「・・・私 なんとなく覚えているんだけど・・・・運んでくれたのってサスケくん?」
「あぁ」
「・・・ご・・・ごめんなさい。重かったでしょ?」
「別に。気にすんな」

・・・気にするよ!!!

ふと気がつけば 夜着を羽織っている。
・・・これは自分で着替えたのだろうか?

「・・・私 自分で着替えてた?」
「いや・・・」
「いやって・・・サスケくん・・・まさか サスケくんが?」
「お前のナリ どろどろだったから。そのまま布団に寝かすのはまずいと思って」
思って?
「脱がして 洗って 寝かせた」

そこでサクラの顔は一気に赤くなった。
「・・・ ・・・ ・・・ご・・・ごめんなさい」
「さっきっから謝ってばかりだな」
「だって・・・」
「だってじゃねぇよ。お前 チャクラの使いすぎで相当やばかったんだ。仕方ねーだろ?」

まるで「明日の天気は晴れだ」と告げるような普通の態度で サスケは信じられない事を伝えてきた。

自分の意識のないところでサスケくんが全て面倒を見てくれたという事実に どうにもこうにも頭が心がついてこない。
「ありがとう ごめんなさい」という短絡的な言葉しか浮かばない自分を呪った。

「私の服・・・」
「そこに洗って置いてある」
「ありがとう・・・・・・」
「帰んのか?」
「うん。まだ朝早いみたいだから 今帰れば 家族にも気付かれないかな~って」

「今 朝じゃなくて夕方」
「え・・・・そうなの!?」

そういった瞬間 夕方18時を伝える鐘がゴーンと鳴り響いた。

とりあえず着替えようと また引き戸を閉める。

何も感じる余裕がなかった心にジワジワと ショックの余波が襲い掛かってきて布団の前にへたり込んでしまった。
・・・恥ずかしい。
好きな人に身体を見られた事が ただ恥ずかしい。

もしサスケくんが同じような状態になってしまったら きっと私もサスケくんと同じようにするだろうけど・・・でも。

たとえ 仲間の看病だとしても 自分の一糸纏わぬ姿を見て感じた サスケの気持ちが知りたくもあり 知りたくもなかった。
その複雑な恥ずかしさは 様々な感情を呼び起こす。
サスケに呆れられたのかもと思う絶望感。忍としてこれ以上の成長は望めないのかと思う諦めに似た感情。
助けられた命はもっとあったはずだと自身を責める声。意識を無くして好きな人に迷惑をかけた。痛みに呻く声が耳の奥でこだまする。

わんわんと耳鳴りがして 世界が回り始める。

あぁ・・・飲み込まれそう・・・。
考える事が多すぎて これから先の未来に不安が大きくて・・・。
自然と呼吸が荒くなる。
眩暈と吐き気と冷や汗。

落ち着かなくちゃ・・・でもどう落ち着かせればいい?

私・・・私・・・・。

やるせなさの塊のように凝る想いを溜息に乗せてはぁ・・・と一息ついた瞬間 ガラッと引き戸が勢い良く開き 飛び上がるほど驚いた。

「・・・なんだ ちゃんと意識あんのか」
「ななな・・・何!?」
「あんまりおせぇから またぶっ倒れてんのかと思った」
サスケの言葉に瞠目する。

サスケくん 本当に心配してくれてたんだ・・・・。
なのに・・・私ったら・・・・

 


最低だ。

 

・・・好きな人に自身を見られて 何を恐れるというのだろう。
もう心はすっかり 貴方に捧げているというのに。

涙がぶわりと音をたてて 瞳を覆う。
サスケが訝しげに眉を歪めた。
溢れる様々な深い思いに 身が焦げそうでサクラはサスケに縋ってしまう。

「・・・―――― サスケくん・・・」
「なんだよ・・・青白い顔しやがって・・・」
サスケは サクラの目の前に跪くと 心配させんな、と呟き抱き寄せる。
その優しい所作に 張り詰めていた緊張がプツンと音をたてて切れ サスケの胸の中でサクラはこれでもかと言うほど泣いた。

涙で瞳が溶けてしまうかと思うほど。
不安も愛おしさもごちゃまぜになって 涙となって流れていく。

今だけ。
今だけでいい。もう何も望まない。
私の気持ちを受け入れて欲しい。

サスケは言葉をかけるわけでもなく ただその胸で泣かせてくれた。

ようやく落ち着いて そっと身体を離すと
「ひでぇ顔・・・」と呟いてサクラの髪を優しく撫で またサスケの腕に抱き寄せられた。


***

 

サスケの熱を感じながら サクラは夕暮れの空気がどんどん夜に飲み込まれていくのを感じていた。
言葉を交わさずとも 視線を絡ませなくとも ピンッと張り詰めた空気が漂っていて 
お互いの気持ちが筒抜けのような気がする。
いや、実際そうなのだ。

サクラは明らかにサスケを求めていたし
サスケも明らかにサクラを求めていた。

指一本でも下手に動かしたら 空気が震えて弾けそうで サクラは緊張してくる。
鼓動は体を内側を容赦なく叩いてきた。

・・・こういう時 イノだったらどうやり過ごすんだろう。
「色々」教えてくれる幼馴染にSOSを出したいくらいだった。
シカマルといつの間に?とあの時はとても驚いたっけ。
もし 今私がサスケくんと 「そんな雰囲気を味わってるよ」と伝えたら 私のようにイノも仰天するに違いない。
イノもこんなにドキドキしたのかな・・・。

そんな事をボンヤリ考えながらサクラは少しだけ身じろぎをするとサスケの掌がサクラの背中に回った。

沈黙を破ったのは サスケだった。


「逢魔が時」という言葉が何時だと聞かれたら それは今だ、と答えられただろう。
それは「始まり」のきっかけでしかなかった。


「・・・サクラ」
サスケの唇が言葉を紡ぐと サクラの顎に綺麗な指を添えて来る。近づいてくるサスケの整った顔に驚いて瞳を閉じそこねた。 
唇が触れて 重たく重なり合って 唇の形を潰す。
サクラの瞳がそっと伏せられ おそるおそるサスケの腕にそっとサクラの冷えた掌が添えられたのを機に サスケはサクラの体を倒し布団へ押し付けた。

「サスケくん・・・」

いつも血色のいいサクラの顔色が まだ青白くて胸が締め付けられる。
いつも 無茶ばかりして心配をさせる この愛おしい娘に少しでも自身の熱を分け与えられたら・・・。
昨日見た サクラの体を完全に忘れた訳じゃない。
むしろ 触れないように忘れてしまえと 遠ざける覚悟を決めたばかりだった。

――――なのに。

サスケは サクラの首筋に舌を押し付け サクラの着ている夜着の帯を勢い良くほどいた。
滑るようにサスケの掌が サクラの羽織っただけの形となった夜着の襟元から入ってくる。
そのまま剥がされ 布地が肌を涼やかに滑る感触にゾクリと背筋がのけぞった。

サスケの掌は躊躇することなくサクラの体をさすり 撫で くすぐる。その唇の熱さ愛撫にサクラは居た堪れなくなる。
乳房をすくうように揉みしだかれ その頂をサスケの舌に絡めとられる。それは執拗に繰り返され サクラの唇から思わず熱のこもった吐息が散る。

堂々と慣れたサスケの手管に サクラは驚いていた。

「サスケくん…」
「何」
「…えっと。ひょっとして…するの?」
「…嫌?」
「え、嫌…じゃないけど…んぁっ」
サスケは有無を言わさなかった。

恥ずかしくて怖くて堪らない自身と違って サスケはどんどんサクラの体に手をつける。

経験した事のない刺激に サクラの心臓は早鐘のように鳴り響く。
普段 感情を表に出さない 静かなサスケの雄の一面をこれから サクラは目の当たりにするのだ。
自身の体を さぁどうぞ、と差出しゆだねる行為。

これから始まるであろう「抱く」「抱かれる」と言葉で簡単にやりとりされる行為の奥深さを思い知った。

今まで感じた事のない刺激に サクラの体は驚くほど早く反応を示す。
ピクリと体が跳ね じわじわと腰の中心が疼くような気配を感じて自分でも聞いた事のないような声が喉から発声される。

何・・・これ・・・・。
こんな世界が 男女の間にあるなんて・・・・。驚きの連続だった。

「・・・サスケくん」
喘ぐ代わりに名を呼べば 必ずと言っていいほど口づけを施された。
サスケの呼吸が荒い。

大丈夫?と聞こうとした瞬間に 自身の腰の中心にサスケの手が伸びてきて サクラは驚愕する。
・・・嫌 そんなところ・・・・!!!

思わず手でとめてしまった。

サスケが サクラを熱に浮かされたようなゆらりと甘美な色気を秘めた眼差しで見る。
「サスケくん・・・そんなところ」
「怖いか?」
「怖いっていうか・・・・」

サスケはサクラの言葉を聞いても 許してはくれなかった。
サクラの手を掴むと いきり立つサスケ自身に触れさせた。

サクラは驚いて竦み上がる。
「・・・これ 入れる」
入れるって・・・・。
「耐えられんのか?」

セックス=生殖行動。というのはちゃんと理解している。
男の体の変化。女の体の変化。
その方法がどういうものかも知っている。

目の当たりにしたサスケの変化に驚き、戸惑っているし 自分自身の掌の中に触れているサスケ自身が入ってくる事は 到底考えられなかった。
サスケも考える暇を与えようとは思ってない様だった。

サクラの答えを待たず 行為を開始する。
自分でも触れたことのない場所を サスケが・・・自分の想う人が触れる。

恥辱と後悔と恐怖で サクラは体が軋むようだった。
掌で顔を覆い隠し 瞼を力をこめて瞑った。

こんな恥ずかしい自分の姿を見たくはない。

「サクラ・・・」

サスケの声が耳朶に響いた。

サクラの顔を覆う掌にサスケはほんのりと触れるだけの口づけを落とした。
それに気がついて サクラは覆っていた掌を離してサスケを見る。

「・・・そんな脅えんな」
サクラは小さくイヤイヤと首を振る。
「私――――。変なんだもん・・・。いやらしい」
「いやらしい事してんだから 仕方ねぇだろ」
「そういう意味じゃなくて」
「こうなるって分かってたことだろ・・・?」
そう呟いてサクラの唇を深く吸う。

ぬるりとしたサスケの舌を受け入れながら 言い表せない屈辱に耐える。
それはサスケから与えられたものではなく 自分自身の不甲斐なさからくる物だった。
拭おうと思っても拭えない不安 苦しいぐらいの恥辱 受け入れたい気持ちとそうさせてくれない気持ちに揺れ続ける。

しかし 不思議な事にこのままサスケのいいように なし崩しに抱かれて一つになりたいと思う自分もいる。
すべてをサスケに差出して解放したい、と。

口づけの感触に脳髄が甘く痺れ始め 体に上手く力が入らない。
その瞬間をサスケは見逃さなかった。

次の瞬間サクラの体に電流が走る。

「・・・ぁあ!!!」

サクラ自身から零れ落ちる雫を指に絡めとられ いやらしい手つきで1番触れて欲しくない場所にサスケの指が挿入される。
腰を引いて脅えるサクラを慰めるように サスケの唇はサクラのそれと再び重なった。
戸惑う。
唇の感触と 指の感触の差異に戸惑う。

・・・・もう訳がわからない・・・。

腰から聞こえてくるぴちゃぴちゃとした卑猥な音が サクラの耳に入って 恥ずかしさも頂点に達した。

そこからサクラの意識は ひどくぼんやりとした物になる。
抵抗する力も 恥ずかしいという気持ちも 恐怖も 霞んで霧散する。
ただ感じるのは 温かな温もりとサスケの息づかい。
体がフワフワと浮くような夢のような時間。腰に煮凝っていく欲望。

・・・なんだろう。
無意識の内に体を強張らせていた恐怖心がユルユルと解けていく。
サスケの指が 1番繊細な部分をなぞり入り込んでいく感触だけ。
「アイサレル」ってこういう事なの・・・かな?
サスケくんは私の事を「アイシテル」のかな?

好きでもない人にこんなことできるのかな?

わからない・・・わからない・・・。理解なんて到底出来ない。

不慣れな官能と戸惑いで 目じりから涙が零れ落ちる。
でも 恐怖とか嫌悪の涙ではない。

ただ一つはっきりと分かっている事は サスケを愛おしい、と思う気持ちだけだった。
そっと瞳を開いてサスケを見る。その眼差しに気がついて サスケがふう、と熱のこもった溜息を吐いた。


「・・・サクラ・・できるだけ力抜け・・・」

サスケの声を聞いて サクラはいよいよサスケ自身が 内側に入ってくるのだと知った。
両者の体は汗ばみ 肌をくっつけると 互いに引き寄せあうようにピタリと吸い付く。
サスケ自身が サクラにあてがわれ試すように擦りつけられる。
そのまま サスケの腰が静かに動いて サクラは産まれて初めて味わう感触に声をあげた。

「・・・ぅぁあ・・・・っ」
「・・・く・・・」

何かがねじ込まれてくる痛みと重圧。
体の中心からこじ開けられるような異物感。
ぐぐぐ・・・と押し込まれる体の響き。

「・・・バカ。息吐けよ」
「・・・無理」

ギリギリとねじ込まれ ジンジンと熱くなっていく中心。
奥まで奥までとジリジリ突き進むその熱に終わりが見えない。

「・・・入った」
サスケの言葉を聞いて サクラは思わず止めていた呼吸を吐き出してサスケを見上げた。
思わずホッとする。
・・・・イノから聞いていたけれど ほんっとひっくり返ったカエルみたいな格好してる・・・。
滑稽だと笑いたくなった。

あんなに恐れていた事が こうして終わってしまうと 大したことがないように思えるから不思議だ。
ただ サスケが埋まっている秘所はお世辞にも心地いいとは言えない代物だった。

「少しなんか話して」
サスケがそのままの姿で呟く。
「この格好で?」
「慣らせないとキツくて動けねぇ」
「そういうものなの?」
「オレもよく知らない」

・・・ウソだ。
サスケくんはすでに女を知っている。

「私ってサスケくんの何人目?」
「・・・お前な・・・」
「だって サスケくん すっごく慣れてる感じだったから」
「感じたってことか」
サスケは意地悪そうに 不適な笑みを浮かべた。サクラはサスケの余裕綽々な表情を恨めしく思う。

「・・・サスケくんの好きな人って・・・誰?」
サスケはその言葉を聞くと 訝しげに眉根を寄せた。
「私の知ってる人?」
「・・・さぁな」
「誰かに言ったりしないよ、私」
「・・・もう黙れ」
サスケが律動を開始する。

「んぁ・・・ずるいサスケくん・・・私の気持ちは知ってるくせに・・・っぁあ・・・!」

寸分のゆとりすら感じられなかった場所から 一気に引き抜かれ そしてまた奥へと貫かれる。
ジクジクと腰に凝っていた快楽の場所に直接サスケの熱が伝わり サクラは言葉を続けられなくなり 変わりにやたら甘ったるい叫びに変化した。

サスケに体を辿られているときに感じていた快感は 一体なんだったのか?と問いたいくらいの刺激で サクラはもう自身が壊れてしまうかも、と覚悟した。
ただ 一方的に与え続けられていた前戯とは違い 瞳を開くと 切なそうに眉根を寄せたサスケの表情を窺うことができ それがサクラの心を甘く溶かしていく。
過ぎる刺激で 痛みの方が俄然強いが サスケの甘く狂おしそうな表情を見ると 自分までその心地が伝わってくるようで不思議だ。
痛みの奥に快感があるような気すらしてくる。

いっぱいいっぱいだけど・・・嬉しい。
サスケくんが私と一つになって 気持ちがいいって思ってもらえる事が嬉しい。
「愛おしさ」「恋」の魔力は計り知れない。
サスケの背に腕を回して サスケの鼓動や吐息をもっと傍で感じたいと思った。
律動は ゆっくりだったものが 回転され 早くなっていく。
サスケの体に余裕がなくなっていくのがわかって サクラはそんなサスケの姿に胸が高まるのを抑えられなかった。

きつく締め付けていた自身の腰から絶えず分泌される蜜に潤滑され サスケがより深く突き刺さるのが分かった。
肌と肌を打ち付ける音。

「・・・サクラ・・・・・・」
搾り出すようなサスケの声。
「・・・サス・・・ケ・・・くん・・・!」

次の瞬間 ドクンと脈打ち体の1番深い奥底に 熱い塊が注ぎ込まれるのが分かった。

うわ・・・・うわ・・・うわぁ・・・・これが・・・・。
これが・・・・サスケくんの――――。
その熱量で サクラの体が反応して跳ね上がる。まるで逃がさないというようにサスケがサクラの体をぎゅうっと抱きしめた。
その所作の幸福感は最強で サスケの想う人のことなど どうでもいい、と思ってしまうほどだった。
サスケの体から力がどっと抜けて サクラに覆いかぶさる。その重みすらサスケの全てに新鮮に実直に愛おしい、と感じた。

互いに荒い呼吸で 眩暈がする。

二人ともしばらく動かなかった。
動けなかった、と言ったほうが正しいか・・・・。

互いの呼吸がようやく落ち着いた頃 サクラがポツリと呟いた。
「・・・私・・・戦場よりすごい世界を知っちゃった・・・・」

サスケはそれを聞いて サクラの肩口に顔を埋めながら クツクツと笑った。
顔をあげてサクラを見ると いつもどおりの顔色をしたサクラだった。

「・・・痛かったぁ」
「悪かったな」
「・・・もう二度としたくない」
「オレはまたやりたい」
「私と?」
「さぁな」
「意地悪・・・」

サクラはむくれて 顔を逸らす。
真に受けているのだ。サクラはサスケの全てを子供のように真に受ける。

「オレと一緒の時は気をつけたほうがいい」
耳元に囁くと サクラの体がビクリと震えた。

ここまで言ってもまだ分からないのか、と半ば呆れながら。

 

 

END

 

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